「花燭」/太宰 治

2002年3月11日
大御所の作家の作品の感想って書きづらい。ネット上に書くには
つまらない気がして。
でもとっても良かったのでこれはメモっておきたい。

この作品は、貧しく弱い主人公がいて、同じく貧しく弱い立場の人が
愚痴りたくて主人公の家に集まってくる毎日に疑問を感じ始めて
というトコロに当時の作者の想いを書き連ねてるよう。
何故、彼らは貧しいのに働かず日がな挨拶のような言葉を交わし合うのか?と。
最初はキズの舐め合い的なこの行動に自分の想いを重ねており、
アンチ・ブルジョアと表層で語っていたが「神は彼らを(貧しい者)救済しないだろう。
何故なら貧しく弱い者の中にもサタンは棲み、富める者の中にも魂の強さ(高潔さ)を
持つ者はいるから。」と気づき始める。
自分なりに要約するとこれが作者の主張部分かな?と思う。

そしてストーリー部分が何ともハートウォーミーでにんまりしちゃう。
この部分を書いてしまうとつまらないのでこれは省略。
ただ主人公の何ともダサイ様子がたまらない。(太宰さんだけに!)
余りに世間に疎いので友人の勤める資生堂の羽飾りのついた帽子に、
そんな帽子を被った友人に毒づく。
友人に対する愛情の裏返し、と取れるのだけど。
真面目で急に熱く感動して、涙したりという辺りも好きだ。
太宰さんの作品の登場人物は、どれも滑稽で可笑しい。
そんなトコロが好感を持てる。(書く時期にもよるけど)
中でもこれは、「ほう、ほおおお」と頬を緩めずにはおれない。
何とも春らしく暖かい小説だなぁ。

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