次第に記憶の薄れつつあるバリ島への旅。
その思い出に浸ってみようかと吉本ばななの「マリカのソファ」
を読んでみた。
内容は、人格分裂の少女マリカの物語で彼女は幼少の頃に虐待に合い、
その苦痛から逃れる為、または守る為に多数の人格を生み出していき、
主人公であるジュンコ先生と出会うことによって傷が癒えていき、一つの人格に
納まっていくといった内容。
ちなみにジュンコ先生は医師ではなく近所の人という設定。
何故、「先生」と呼ぶかといえば「先生」と呼ぶことで遠い人になるから、だそうで
他者が近い存在になるとどこか遠い所へ行ってしまうことを恐れてそう呼ぶのです。
後半でバリ島へ旅行するのですがその頃には、ずいぶん症状も良くなり、
二つの人格にまでなりました。
そしてそのウチの一人、「オレンジ」という少年
(父親からの愛もないマリカにとって唯一の救いの王子様)
が最後にバリで消えるのですが
ウブドゥでジュンコ先生とケチャ・トランスダンスを楽しんで
ホテルのプールで消えるという辺りの描写が
何とも懐かしかった。
結局、私の観たダンスもイマイチだったし、王子様なんつーのも
いなかったんですがね。
似非の王子様ならいたけど彼は、結婚したし、
しかも私にとって王子様なんつー存在ではないけど。
で、マリカの王子様「オレンジ」は、小さい頃に読んだ童話の世界が元になっており、
その世界に帰っていったかの書き方。
重めのラインになりがちの小説なのにそういったファタジーな要素もあるし、
風景描写も瑞々しくまさにバリ島で飲んだトロピカルジュースのような
読後感に本当にリフレッシュした好作品でした。
私自身は、重いテーマの本を読むことが多かったんですが
最近は、割に心も頭も軽くなる本、楽しい本を読みたいので良書に巡り会ったな、という気分。



コメント